私も氷河期世代であり、この本の内容にとても共感できました。自分では覚えていない細かい出来事も書かれており、あの頃を思い出させてくれる本でした。
『1973年に生まれて 団塊ジュニア世代の半世紀』は、著者である73年生まれの速水健朗氏によって描かれた、団塊ジュニア世代の50代に突入した現在を振り返るノンフィクション年代記です。本書では、1970年代から2020年代にわたる日本社会、メディア、生活の変遷や、この時代に生まれたものや失われたものが詳細に描かれています。
速水氏は、本書を通じて従来の世代論に挑戦し、新たな世代観を提案しています。彼は、団塊ジュニア世代に対してノスタルジーな回想や残酷な物語ではなく、客観的な視点からその成果や苦労を描くことを目指しています。
本書は全5章から成り立っており、各章では異なる時代を取り上げています。最初の章では、1980年代を「ピッカピカのニュージェネレーション」として紹介しています。この時代は人口の増加を実感できる時代であり、当時の日本の朝ご飯やテレビのニュースなど、生活の様子が詳細に描かれています。
2章では、浮かれた時代である1990年代が取り上げられています。この時代には、コードレスホンが若者の「一番欲しいもの」として登場し、SMAPがブレイク前のCMで活躍していた時期などが紹介されています。
3章では、1973年に焦点が当てられています。この年はパニック小説や難民問題、乳児廃棄物がコインロッカーに捨てられるなど、社会に大きな影響を与えた出来事が起きた時代です。
4章では、2000年代の自撮りとリアリティー番組の時代が紹介されています。自撮り用携帯電話の登場や、ネットバブル時代におけるビジネスの流行などが詳細に描かれています。
最後の章である5章では、2010年代の人口減少時代と団塊ジュニアの死生観について考察されています。団塊ジュニア世代が直面した問題や課題に焦点を当てながら、その次の世代が登場しなかった理由や、生命の繰り返しとそれを阻止する世代について深く探求しています。
『1973年に生まれて 団塊ジュニア世代の半世紀』は、新たな世代観を提案し、ロスジェネレーションという固定観念を超える本です。速水健朗氏の圧倒的な構想力と詳細なディテールによって描かれた本書は、読者にとって興味深い旅となることでしょう。この本を通じて、読者は自身の世代の過去と未来について新たな視点を得ることができるでしょう。